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万博会場の安全性まとめ
2024/05/22
みなさんこんにちは
いよいよ2025大阪・関西万博の開幕まで1年を切り、テレビやネットでも万博関連のニュースや番組が多く見られるようになってきました。
万博開催に向けた建設工事も本格化し、ヒト・モノ・お金・情報が活発に動いています。
そんな万博開催に向けた機運に冷水を浴びせたのが、先日起こった万博工事中の事故です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240520/k10014455291000.html
この事故では幸いケガ人はでなかったものの、万博会場となる夢洲の安全性を疑問視する投稿がSNSを中心に再加熱し、大阪市議会にも夢洲での万博開催を中止するよう求める陳情書が出されました。
万博は大阪の成長につながるビッグプロジェクトであり、150を超える国や地域が世界最先端の技術や知見を持ち寄って、地球規模の課題を解決しようとする「未来社会のショーケース」です。大阪の(もちろん日本中の)子ども達に一足はやく未来社会の片鱗を体験してもらうことで、今後20年30年の日本のイノベーションを加速させるとともに、経済観念だけでなく地球とどう共生していくか、命とは何か、といったこれからの時代に欠かせない重要なテーマを考える機会としても大切です。
https://www.expo2025.or.jp/overview/purpose
ただ、そんな万博も、会場の安全性が担保されていなければ、スタートラインにすら立つことができないというのは言うまでもありません。
そこで、今回は大阪市議会の都市経済委員会(万博を担当する委員会)において、万博会場の安全性について改めて整理しましたので、皆さんにもぜひご参考にしていただければと思います。
安全性の担保を議論するときに大切なのは、「リスクの管理」と「適切な対処」だと思います。
予防と対策と言い換えてもいいかもしれません。この2つの観点から今回の夢洲での事故について、議会で検証を行いました。
まずリスク管理の面ですが、夢洲は多くの方がご存知の通り、大阪湾に浮かぶ埋め立てによってできた島です。そして、その埋め立てに際しては、建設残土などのいわゆる「土」が使われている部分と、ゴミを焼却した後の「焼却灰」などで埋め立てられた部分が存在します。
そして、その焼却灰から発生したメタンガスに溶接の火花が引火して今回の事故が起こりました。
怖っ!!
と、このまま普通に聞いたら誰しも思うと思います。
可燃性ガスが充満しているところで万博をやるのか、と。
誰かが間違ってライターで火をつけたら爆発するのか、と。(万博会場内は禁煙です。念のため。)
でも、そう思った方はぜひこのブログを見てご安心いただければと思います。(読むのが面倒くさいと言う方は最後に論点だけ箇条書きにしておきますので、スキップしてそちらだけご覧ください)
まず最初に知っておいて頂きたいのは、「メタンガスは自然界に普通に存在する」という事実です。
「ガスが発生している土地」というパワーワードはなかなかショッキングですが、実際にはメタンガスは色いろなところから発生しており、しかも空気より軽い性質のため自然環境下ではすぐに希釈され無害化されています。(メタンガスは無色無臭で、人間が気づくことはありません。)
とはいえ、鋭い方は「ゴミの焼却灰を埋め立てた土地では自然界よりも濃度の高いガスが発生しているのでは?」と思われるかも知れませんが、現在みなさんが普通にご利用されている鶴見緑地や、夢洲のお隣の舞洲(私も子どもを連れてよく遊びに行きます)をはじめ、全国的にもゴミの焼却灰を埋めて造成した土地はいくつも存在し、焼却灰からのメタンガスが発生している土地という前提のもとに様々なイベントが開催されていることが議会質問の中で確認されました。(泉大津フェニックスでは音楽ライブが、鶴見緑地では国際花と緑の博覧会が開催されています。)
ではなぜ今回爆発が起こったのかといえば、「ガスが地下空間に滞留し濃度が高くなっていた」ことが原因と考えられています。自然界ではすぐに希釈されて無害となるメタンガスですが、風が通らない場所にガスが溜まり続けると濃度が高くなり、引火する恐れがあるということです。
もちろんこの点は、大阪市も博覧会協会(万博の実施主体)も、工事の施工業者も知っていた話であり、工事の作業マニュアルにも「地下等で作業する場合は事前にガスの濃度を測定すること」と定められていました。
それでも事故が起こってしまったのはまさに想定外のことで、地上で行っていた溶接作業の火花が、地下空間に飛び、そこに偶然溜まっていたガスに引火したというのが顛末のようです。
不幸中の幸いで怪我人が誰もいなかったのは、作業場所(地上)と引火場所(地下)が離れていたためですが、「地下等(引火のリスクがある場所)で作業する際には必ずガス濃度の測定を行う」というマニュアルだけではリスクを十分に管理できないということも一方で明らかになりました。
これを受けて、博覧会協会では地上作業の場合であっても周辺の空間のガス濃度を計測するように作業のマニュアルを見直し、今後は同様の事故が起こらないよう対策が取られました。
さて、今回の件では万博工事の施工期間中の新たなリスクが明らかになり、それに対する追加の対策が取られたことで、事故前よりも安全な環境となったわけですが、人の心理はなかなかそうデジタルにはいかないもので、一度事故があれば「何となく心配」という気持ちは残ってしまうものです。
そこで、博覧会協会では有識者の指導助言のもとで追加の対策として、万博会場内にガスが滞留する箇所が存在しないよう通気装置の総見直しを行うことや、さらには本来ガス濃度の計測が必要ではない「土」で埋め立てられた部分についても、念のためにガス濃度を計測することとしました。
まとめると、今回の事故で指摘されたリスク
「自然界では無害なメタンガスも、滞留すると引火の恐れがある」
に対して、2つの対策
「ガスが滞留する箇所が生まれないよう通気装置を万全に設置する」
「実際にガスが滞留していないか、開催期間中は全てのエリアで計測を実施する」
を講じるということです。
これで、科学的にはリスクが正しく排除され、安全な会場運営が可能と言えるのですが、議会ではこれに加えて、大阪市の横山市長に「市長自身がしっかり安全を確認して、市民に向けて発信を行うことが大切ではないか」という点も議論させてもらいました。
博覧会協会は万博の開催に責任をもってあたる組織ですが、市民からするとどうしても少し遠い存在、いわゆる「顔が見えない相手」です。
やはり市民から選ばれた市長として、きちんと安全管理をして、市民の皆さんに情報発信をしていくことが不安の払拭につながると思いますので、頑張ってくださいと市長にお願いしました。(もちろん議会からも正確な情報発信に努めることを約束して、今このブログにつながっています)
そして最後に、最も大切な論点として、私たちは万博を「成功」させるために力を尽くしているのであって、「不安払拭」と「機運醸成」、簡単に言えば「あんしん」と「わくわく」の両方をしっかり発信していかないといけないということです。
今日は片方の「あんしん」についてだけまとめましたが、本当の目的は万博を多くの人が楽しみ、刺激を受けて新しい未来に希望を持ってもらうことです。
この点は議会でも大阪維新の会だけでなく、多くの会派の議員たちが指摘していました。
万博のワクワクについてはまた次の機会にまとめたいと思います。
それでは、今日はこの辺で。
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