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2025万博の「大阪市民1人当たり1万9000円負担」は正しいか
2023/11/17
みなさんこんにちは
先日ショッキングな記事が新聞の見出しに載りました。
万博の開催にあたり、大阪市民1人当たり「1万9000円」の負担というのがその内容です。
突然これを見せられたら、市民の皆さんは驚かれたと思います。
万博開催に向けて俄かに冷え込みムードが漂っているのも頷けます。
でも、この「一人当たり1万9000円負担」という表現は本当に正しいのでしょうか。
万博開催のための事業費はコロナ禍やウクライナ情勢の影響なども受け、
資材や人件費が急激に高騰した結果、当初の想定を大きく上振れし、
最大で2350億円と試算が改められました。
この費用を国・開催自治体・経済界で3分の1ずつ負担することになっていますので
単純に計算すればそれぞれおよそ783億円ずつの負担となります。
国が783億円、開催自治体が783億円、経済界が783億円の負担です。
開催自治体は大阪市と大阪府で、費用は折半ですからそれぞれおよそ391億円の負担になります。
細かい計算は省きますが、大阪市民は府民でもあり国民でもあるので、
国の人口で783億円を割った額+府の人口で391億円を割った額+市の人口で391億円を割った額
をそれぞれ負担することとなり、その合計がおよそ1万9000円になるという計算です。
確かに、一見正しそうです。
ですが、これは典型的な「片天秤」の議論だと感じます。
つまり、天秤の片方にだけものを載せて「ほら傾いた」と言ってる状態です。
万博にはもちろん開催するための事業費(コスト)がありますが、効果(メリット)もあります。
「万博のメリットとは何か」という問いに正解をストレートに答えることは難しいですが、
少なくとも「量的効果」と「質的効果」があるように思います。
量的効果の最たるものが経済効果だと思いますが、これについては博覧会協会において試算されています。
協会のHPでは
「日本経済及び大阪・関西の地域経済の活性化やビジネス機会の拡大による中小企業の経営強化により、約2兆円の経済波及効果が見込まれる。」
と記載されています。
質的効果についてはよく言われる、この万博を体験することで、命や環境に対するそれまでの考え方が変わったり、
それらを世界の人たちはどう考えているのかに触れることで、世界に対する理解や、自分自身の立ち位置の理解が深まったり、
さらにはこれから先の生き方について新たな刺激を受けること、
世界に対して新たな視点を獲得すること、
もしくは新しい技術や価値に触れて未来に期待が膨らむことなどなど、です。
話を天秤に戻すと、「負担」というのはマイナスの影響を請け負うということですから、
片方に費用を乗せるのであれば、もう片方には効果を載せなければ公正な評価はできません。
質的効果は残念ながらお金に換算できないので、さし当たり1人あたり1万9000円の負担は正しいのかという問いについては
少なくとも経済効果2兆円のうち、開催自治体に落ちるものと国全体に広がるものに分類し、それぞれの経済効果によって生じる税収を国民・府民・市民一人当たりに割り戻した金額の合計額を1万9000円から差し引かないと正しい「負担」とは言えないのではないでしょうか。
加えて言いますが、この1万9000円も決して増税されるわけではなく、これまでの市政運営の中から拠出され、当然経済効果が発現すれば税収増によって返ってくる費用ということになります。
だからこそ、いますぐ市民が負担するかのような書き振りは少し違うんじゃ無いかなと思うところです。
みなさんはいかがだったでしょうか。
ここまで読んで頂いて、それでも頑なに「先ずは払うんだから「負担」で間違いないんだ」とおっしゃる方、
確かにそれはそれで間違いだとは言えないと思います。
でも、そういう方にはこんな見出しを提案したいと思います。
「大阪市民一人あたり1万9000円の投資」
この方が、未来に向かってすごい事業を動かしているんだというワクワク感が伝わっていくような気がしませんか。
大阪市民全員が1万9000円ずつ出し合って(それプラス府民や国民のみなさんもお金を出し合って)投資するプロジェクトと聞けば、一体どれだけの規模のことをこの大阪でやろうとしているのか少しだけ実感が沸く気がしませんか。
とはいえ、万博の開催自体に否定的な考えの方がいらっしゃることも事実で、そうした方々の声も真摯に受け止めていくことは大切です。
万博の成否は全てが終わった後に、かかった費用と得られた経済効果、そして今現在のモヤモヤ感と体験した後の感想を天秤にかけて初めて評価されるものであると思います。
また、1970年万博がそうであったように、長い年月をかけてこの万博を体験した子ども達が将来大人になった時に証明される効果もあると思います。
いずれにしても、今すでに動き出している大きな国際的プロジェクト「2025大阪・関西万博」ですから、これをできる限りPRし、経済効果も含めた大きな効果を上げていくことが重要であることは間違いありません。
今この時期にお金の話ばかりがニュースになっていること自体が既に大きな機会損失だと思います。
万博の開催を大きなビジネスチャンス、あるいはエシカル(倫理的)チャンス、アカデミック(学術的)チャンスだと捉えて、さまざまな人や企業や組織や国家までもが動き出しています。
コストのニュースとセットで、そうしたニュースも早く聞かれるようになるといいなと思います。
それでは、今日はこの辺で。