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補助か、無償か、所得制限か。

2022/10/28

みなさんこんばんは。

先日大阪市会で、こども医療費無償化の所得制限の撤廃が議論されました。現在は0〜12歳のこどもたちの医療費については保護者の所得に関わらず無償(医療事務費500円のみ)となっています。一方で、13〜18歳のこどもたちは保護者の所得によって無償化の対象にならない場合があります。この制限を撤廃して、保護者の所得によらず全てのこどもの医療費を18歳まで完全無料にできないかというのが議論の趣旨で、これに対しては松井市長も前向きな考えを示しました。

また、現在コロナ禍における家計負担の軽減としておこなってきた学校の給食費無償化について、今後も継続する意向も表明されました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2b85e71d01b413b0ce8ba2130f5256d694738152

子育て環境がさらに充実することに歓迎の声が聞こえる一方で、原資は税金ですから「金持ちにまで無償化する必要があるのか」といった声や、「こどもの食事代くらい親が負担するのは当たり前だ」という声も聞かれます。

そこで今回は無償化の考え方について整理をしておきたいと思います。

行政が何かの費用を補助する場合、「補助」と「無償化」にはその理念において大きな隔たりがあります。ここは全然違いますから、ごちゃ混ぜにしないように注意が必要です。

「補助」とはその名の通り「おぎなって」「助ける」訳ですから、本来的に費用を負担する義務があるのは利用者(住民)側ということになります。

一方で「無償化」は費用を利用者側に求めないわけですから、本来的に行政側が責任を持って負担すべき費用ということになります。

例えば、信号機や街灯の電気代は全住民から集めた税金で薄く広く負担されていて「所得の高い人だけ信号を渡るときには信号代を払ってください」とはなりません。救急車を呼んだ際や、警察に落とし物を探してもらった際も、所得の高い人だけ「1回1000円かかります」とはなっていません。それらは行政が責任を持って全住民に平等に提供すべき行政サービスという位置付けだからです。

一方で、大阪市がおこなっている塾代助成制度等はあくまでも補助です。塾にいくかどうかは個人の選択であり、その費用も個人が支払うというのが原則です。その前提の上で、家庭の経済格差によらずにこども達の可能性を伸ばしていくことが将来の大阪全体の公共の利益につながるという思想のもと、塾(習い事)に通いたくてもお金の都合で通えないこども達に塾代の一部を補助しています。当然そこには所得制限(所得の高い保護者のこどもには補助を支給しない)という考え方もとられています。

今回の件に話を戻すと、こども医療費無償化に所得制限を無くすということは、こどもの医療費は本来親が負担するものから、行政が提供するべき標準的なサービスに位置付けが変わったということになります。超少子高齢社会をむかえた中で、こどもを育てる費用(中でもとりわけ医療費)というのは行政が負担すべき(それによってこどもを少しでも産み育てやすい社会を作ろう)という意思判断がなされたということになります。

学校給食については給食が従来の「食事」という考え方から、学校給食法に規定されている食育(食事を通じて自国と他国の文化や風土を学んだり、食べ物の産地や栄養について学ぶこと)のための「教材」である(義務教育は原則として無償である)という考え方に格上げされたという事が言えると思います。

何が個人の負担で、何が行政が提供すべきサービスなのかという考えは時代の趨勢や政治のリーダーの考え方によってこれからも変わっていくと思います。行政のお金の出し方(予算)には、社会を将来どういう方向に向かわせたいかという意志が宿っているという視点で見れば、補助金なのか無償化なのかという議論は実は結構趣深い議論だったりします。

ぜひ、今後政治をウォッチする際に気にしてみてくださいね。

それでは今日はこの辺で。